失敗から学ぶ


(冒頭にコメント)
昨日の投稿が思いの他、いろいろなところに反響を及ぼしているようです。
簡単に情報発信できる時代の便利さと、恐ろしさを感じています。
続ける以上、1学生のブログとはいえ、
その言葉には一つ一つ気をつけなければいけないなと思いました。



今日は、午後の数時間を後輩学生の実験へのアドバイスの時間に当てました。
彼の研究は、現在佳境に入ってきており、私としてもできるところは手伝いたいという気持ちがありました。
未熟な指導力ではありますが、彼の研究と私の研究が、まったくかけ離れているわけでもなく、
私の過去の経験や知識を生かして、精一杯のアドバイス、ディスカッションをしていました。


そんな矢先に、事故が起こりました。


万能試験機(鋼材やコンクリートを引っ張ったり、圧縮したりする載荷装置)から、
鉄筋コンクリートの試験体を外すため、下クロスヘッド(試験体の下端を抑えていた載荷装置の一部)
を下げていたところ、不注意で下クロスヘッドをラム(載荷装置の載荷台)に接触させてしまいました。
万能試験機は緊急停止。電源は入るものの、ボタンをいくら押しても、下クロスヘッドが動かなくなってしまいました。
試験方法について、後輩とディスカッションをしながらの「ながら作業」がその事故の原因でした。


かなり、焦りました。装置を壊したこともそうですが、私の実験ではなく、
ほかの人の実験に支障をきたしてしまったこと。何より卒業がかかっている、逼迫している
後輩を助けるために来たのに、逆に障害を増やしてしまったことに責任を感じていました。


凹んでいても仕方ないので、急遽都内へ出張中のHさんに電話。
状況をお伝えして、対処法を聞きました。


幸い、実験開始前にラムを、ちゃんと載荷開始位置に上げていたため、
ラムに加わった力の逃げる余地があり、ラム中を破壊することなく、
下クロスヘッドのブレーカーが落ちたということが分かりました。
(ラムを壊していたら、修理に時間を要する最悪の事態になっていたかもしれません)
その後の実験は滞りなく行うことができました。


実は、この事故の背景には、ある失敗事例が生かされていたなと、後でふと思いました。



私は、この装置で、以前鋼材を引っ張る実験をしていました。その時に、グラフに変な挙動が表れ、
その意味が分からず、Hさんに助言を求めたことがありました。そのとき指摘されたのが、
「ラムを載荷開始位置に上げたか?」ということでした。
理屈も分からず、単に試験を始めたため、載荷装置自体の重さが、
載荷時に鋼材にかかっていたというのが、わかっていませんでした。



そのような過去の失敗経験があり、扱う装置の理屈を知っていたから、今回は不幸中の幸いというか、
最小限の事故で済みました。どんなことでもそうですが、とりあえず使えればいいという
ことが世の中横行にしています。それは時間的制約や、構造上の複雑さなど理由は色々あるでしょう。
ただ、やっぱり知っているに越したことはないし、理解した上でやったほうが
間違いなくいい。そんな当たり前のことを改めて認識させられました。
失敗しておいて言うのもおこがましいですが、いい勉強をさせていただいたなと思いました。



最後になりましたが、Hさんと後輩には、多大なご心配とご迷惑をお掛けしました。
申し訳ありませんでした。