目からウロコ

現在、担当教員の先生が主催している勉強会(専門論文+良書を読んで議論)で
今週は「技士道(西堀栄三郎)」を読んでいる。私にとってこの本を読むのは2回目なのだが、
ホント目からウロコとはこういうことを言うんだろうなと、えらく感動している。
1回目のときはそれほどのインパクトを感じなかったのだが、今はまただいぶ読み方が変わった
自分に気がつく。

よく考えたら、この人物は最近テレビに出ていました。
そう、木村拓也主演のドラマ「南極大陸」で香川照之が演じていました。
この西堀栄三郎という人物のことは、wikipediaを見れば、そのバックグランドはよくわかります。
でも、そこからだけでは決してわからない、この人の人となりや考えがこの本には凝縮されて表れています。


「本の題名が少し固くてとっつきづらい」とか「私は技術者じゃないから関係ない」と思わずに、
ぜひ現代の幅広い世代の人に読んでもらいたい。間違いなく、現代に通じる良書です。


一つ、研究的観点から、その通りだなぁと今日思ったことを実体験を交えて一つ。
西堀さんは「現場で研究する」ときの概念を「工場実験法」という言葉使って表現している。
西堀さんも注意しているが、これは「実験」ではなく「虚子坦懐に観察する」ということである。
工場(「現場」とか「実験室外の環境」とも言い換えられる)という制約条件の厳しい中では、
実験条件を変えるということは困難で、「観察」が謎を解く唯一無二の方策と言える。
実験室ではないから、様々な要因の「バラツキ」が存在するわけだが、
逆にそのバラつきは「条件の変化」がもたらすと考えることで、その変化の原因を暴いていく。
そのキーとなるのがデータに含まれる「特異性」である。



今日、骨材の洗浄(コンクリートを練るための準備として行う。結構な重労働。)をしているときに、
時間があった(後輩が頑張ってくれていた)ので、周りを何気なく観察していた。
そのとき、ふと目に留まったのが「木の表面の裂け目がすべて木の高さ方向に向かっている様子」であった。
定量的なデータではないが、定性的でかつ特異性のあるデータ群である。
そこから、「なぜ縦に裂け目が入るのか?」という疑問が湧く。ここからはある程度の知識の
バックグラウンドが必要になるのだが、私の頭の中では、
木の年輪の成長する方向(幹が太くなるように内から外へ広がっていく)と、
外環境と内環境の湿度差による拘束状態の差が頭の中で描けた。この2つの条件が揃えば木は縦に切れ目が入る。
未だ仮説でしかないがそんなに間違っている気もしない。もしこれが正しければ、
木の裂け目を縦に入れない方法(上記2つのどちらかを絶やすような工夫)もなんとなく見えてくる。


昨年某企業のSさんにも言われたが、常にこうした特異性に気づける訓練はしておかないといけないなと思った。
たぶん、数年後、もう一回読むと違うだろうなと思うので、ここに備忘録として残しておく。